2013年3月28日木曜日

フルートの材質と音色

フルートの材質が音色に影響を与えるとすれば、その要因は腹の底から管体に至る「空気柱」(デボストが言っているもののこと)ではない。それ以外の様々な振動が材料を振動させ、フルートの音色の構成に影響を与える。また、材質の違いによって奏者に与えられる感触の違いや、製作時の加工のしやすさ、製作時から販売時、修理時に至る全ての過程で携わる人間に与える高級感、などから来る楽器の総合的な品質の違いが演奏の品質に影響を与え、全体として音色が異なってくるということもあるだろう。

最初に、「それ以外の振動」の要因について考えてみる。要因としては以下のようなものが考えられる。
  • アタック 
  • キー操作
  • ビブラート 
  • 息漏れ
アタックしてから歌口で空気が振動し始めるまえのごく短い瞬間には、歌口に当たった息のエネルギーは直接歌口の材料を振動させると思う。この振動は材質よって当然異なる音質のノイズを発生させると思う。

キー操作はどんなにソフトに行ったとしても、パッドと音孔が当たるのだから音は出る。これも材料の音がするはずだ。また、これは音孔が半田付けかどうか、フェルトのパッドかどうかという違いも大きく影響すると思う。

ビブラートは息の強弱であるという視点で考えると、弱い息から強い息に切り替わる瞬間は先述のアタックと同様の現象が発生すると思う。

息漏れは歌口以外の場所に息が当たることになるので、先述のアタックのノイズが常に鳴り続けている状態となる。

以上から、息漏れがなければ、ノービブラートのロングトーンの途中では材質による音色の変化は起こらないはずであるということが言える。実際に自分の実体験ではこれが当てはまる。しかし、息漏れがある場合は常に材料の違いが音色に影響してしまう。この点については別の機会に考察しようと思うが総銀製礼賛主義はここから来ているのだと思う、ということだけ言っておこう。

次に「演奏の品質」について考えてみる。
高級な材料で作られる楽器は、当然、上級の職人が製作し、また、同じ職人であっても高級な材料であればより丁寧に作業するということは想像に難くない。流通や修理、調整の過程でも同様の扱いを受けるだろう。そのようにして奏者の元に届く楽器は、精度よく製作されよく調整された品質の高いものとなるだろう。そして、奏者にとっても高級な材料で作られた楽器はその見た目も、感触も、霊感を刺激するに違いない。そこに高い品質の演奏が生まれると考えるのは自然なことだ。当然、音色にも影響する。

以上の考察から、楽器の材質は音色に影響すると言える。そして何も工夫をしなければ高級な材料で製作された楽器の方が良い音がする可能性が高い。

しかし、私の実体験では、必ずしもそうならない。またはそうならないように工夫できる、否、フルート趣味が非ブルジョワジーであることを証明するためにも、つまり、自分の経済力で最大限楽しむためにも、工夫すべきだ。

次回は実際の楽器の例を挙げて、この点について考察したい。


2013年3月21日木曜日

新しいフルート、そろそろ一年

昨年3月、フルートを買い換えた。

下取り:
アルタス A1607 (CC、総銀、ソルダード、巻き管)

購入(2本):
ヤマハ YFL-584H (RH、頭部管銀)
アルタス A807E (CC、Eメカ付、リップ銀)

手元に残した:
ムラマツ スタンダード (CC、総銀)

セオリーに反し、総銀ソルダード(しかも巻き管)から頭部管銀およびリップ銀への ”スペック・ダウン” である。

そろそろ一年になるので、感想などをつらつら書いていこうかと思う。
また、買い替え時や定期調整時などに行った他の楽器の試奏の感想なども。

まずは、何で買い換えたのか。
  1. A1607のオーバーホール時期だった。
  2. A1607の音が枯れてきてすごくよくなってきた。
  3. A1607の音色が良過ぎて自分自身の技術の拙さときちんと向き合えなくなった。
  4. フルート人生で一度もH管リング(以下、RH)を吹いたことがなく、それを知らないままにしたくなかった。
  5. たまたま光が丘管弦楽団の次の本番で、H音のある曲があった。
  6. A1607は音色はいいが幅広い表現が当時の自分にはできなかった。特に音量の変化。
  7. 状態の良い楽器が欲しかった。

下取り予算内における買い替え機種の選定。
  1. RH仕様で予算的にちょうどよいムラマツEX(試奏したのはREH)は好きになれなかった。
  2. 他のメーカーではH足部管が付けられる機種が限定的でいまいちだった。例えばサンキョウエチュードにH足部管が付けられない。アルタスなら選択肢があったはずだが、その時点ではアルタスからの買い替えなので除外していた。
  3. ヤマハは頭部管銀でもH足部管が付けられる。予算的には管体銀の684も行けたが試奏の結果584がよかった。
  4. YFL-584Hだと下取り額を下回るので、サブ楽器を買うことに。各社最低価格周辺のモデルを試奏の結果、なんとアルタスが最高得点で予算オーバーしつつ購入決定。これは良すぎる楽器だ。(今年の3月から2万円ほど値上がりした)

買い換えてよかったかどうか。

よかった。

ヤマハはコストパフォーマンスが最高だと思う。EC頭部管は全音域出しやすく作ってある。音量差も付け易く、A1607に比して音楽を表現しやすい(音色は負ける)。しかし、吹き方を誤ると(吹き込みすぎると)ゴムを伸ばしたような、フルートじゃないような音が出る。また、このプロフェッショナルシリーズは少し調整が狂いやすいのかもしれない。これまでの実績としては、3ヵ月毎の調整が必要だった。アルタスA807EはA1607とはまったく異なる印象で、こちらは音が素直でコントロールもしやすく、音楽表現もしやすい。


銀を多く使っているかどうかの件。

リップ銀のA807Eは、歌口の響くポイントをはずしたときは音量が出せない。A1607でもYFL-584Hでも、多少外してもそれなりの音が出る。このあたりが銀製かどうかの違いなのかも知れないが、裏を返せば、「銀は鳴る」というのは実は間違いで、歌口が鳴っていない=息漏れ状態の時に楽器が別の振動をして大きな音が出ているだけで、「銀は雑音が大きい」が正解なのではないかというのがこの一年で感じたことだ。A807Eは、歌口が鳴るとムラマツスタンダードと遜色ないか、むしろ良い音色で音量も十分に感じる。総銀製の楽器は総じてノイジーで、たとえ歌口がよく鳴る状態にあっても響きが抑えられてしまう感じだ。ここを逆手にとって活用すれば表現の幅は広がるのかもしれないが、マニアックだし、本来のフルートの技術とは方向性が少し違ってくる気もする。その点、頭部管銀というのは中庸で両方のいいとこ取り的で、値段も安くて、言うことなしだ。フルートの技術、特に歌口を鳴らす技術を磨くためには銀の使用は少ないほうがよいが、外した時の保険として銀はある程度欲しい。そのニーズには頭部管銀はベストマッチと言えるだろう。一方、総銀のニーズは保険を過剰に掛けたい素人系ニーズと、マニアックに使いこなす玄人系ニーズに二分化されていくだろう。そしてアマチュア界では当然、前者が多いと思う。アマオケを聴きにいくと前述のノイジーな音がよく聞こえてくる。後者の代表例はアンドレアス・ブラウだろう。ムラマツの総銀ソルダードをマニアックに吹きこなし、図太い芯のある音にコロコロとした軽やかな響きを加えて、すばらしい。でも、あれはアマチュアには難しいし、私はそういうアマチュアフルート吹きを知らない。アマチュアフルート界の総銀礼賛主義、怖いと思う、というのが、総銀からスペックダウンして一年たった時点での感想だ。

本日はここまで。
次は、調整の狂い易さ、ソルダード、巻き管などの件。
試奏したフルートの件。試奏したフルートの状態の件。
ムラマツのこと。
など、書ければ、書きたい。

(2019/09/03 追記)
上記の記事は書けていないが、YFL-584Hのその後についての記事
・総銀製のFYL-61と頭部管銀のYFL-584Hとアルペジョーネソナタ
・アルペジョーネソナタ初合わせとFYL-584H



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