日曜日にピアノとアルペジョーネソナタの初合わせをした。第一候補のYFL-584Hで臨んだが、ピアノの人にもその家族にも、すこぶる評判が良かった。やっぱり自分ではこの楽器が他の楽器に比べて「音色」が素晴らしいとは思えないし、色々吹きづらい点はあるのだが、音量のコントロールがしやすい点と音色に癖がない点は優れていると思っている。フルートの音色は、フルートをやっている人間にとっては、デーハーな音が好まれる傾向にある(根拠なし)と思うのだが、そうでない人にとっては、癖のない音のほうが好まれるのかもしれない。私のフルートを「美しい」と評していただけた。もう迷うことなく、この楽器で行こうと決めた。
一つ思うこと。
演奏が美しく聴こえるかどうかの決め手は、いわゆる「音色」では ないのではないかという気がする。1つのフレーズを適切な音量変化と音程と普通の音色で吹き通した時に、初めて「美しい」演奏になるのだと思う。言葉で説明するのは難しいのだが、例えば、逆に「美しくない」例としては、極端な「後押し」をする、つまり、適切な音量変化ではない場合などが挙げられる。この場合、いわゆる音色が美しくても、演奏としては美しくないということになる。フルートをやっている人は、音色がきれいならばこのような問題は無視してしまう傾向にある(根拠なし)が、一般の人は厳しく評価すると思う。こういう後押し系は、いわゆる、押しつけがましい演奏スタイルとなってしまうのだと思う。一方、自分の演奏が、安い楽器でも美しいと言ってもらえたのは、演奏スタイルが良かったからだと推測している。そして、安い楽器だからこそ、余計な事(もっと鳴らしてやろうとか、音色に変化をつけてやろうとか、そういうこと)を考えずに、正しい音量、音程、フレージングに集中できるのではないかというのが、私の考えである。そう、安物楽器の正当化、非ブルジョワジー礼賛主義である。
次の問題は、このアルペジョーネソナタをどの編曲で演奏するかである。今使っているのは昔に買った日本フルートクラブのものだが、色々間違い等もあり使いにくい。これをベースにパユのCDを真似て吹いているが、パユが使っている版ってなんだろう?オリジナル編曲なのだろうか?今度新宿のムラマツで聞いてみよう。
2019年8月27日火曜日
2019年8月24日土曜日
総銀製のFYL-61と頭部管銀のYFL-584Hとアルペジョーネソナタ
だいぶ前の2013年にこんな記事を書いたあと、実は、YFL-61という総銀製の中古楽器を手に入れていた。2015年暮れのことだ。そして総銀製についてうんぬんしていた記事の続きも全然かけていない。
まず、YFL-61という楽器について。これは、購入した中古屋さん(イシバシ楽器)によると、1970年代にヤマハでは初めて作られたハンドメイドフルートとのこと。仕様は、総銀、インラインリングキーでC足部管(以下RC)、もちろんEメカなし。何でこれを買ったかというと、中古屋さんのページを見ていて、やっすい総銀製RC仕様のしかもOH済みの楽器があるなー、総銀製も試してみないと、「総銀製についてうんぬんしていた記事」の続きが書けないし、ということで店舗に足を運び、試奏したところ、一目ぼれしてしまったからである。頭部管に凹み修理跡があるのが気になる点ではあったが、そのキーの軽さと音色の美しさ、そして安さとRC仕様、二度と出会えないかもしれないと思い、買った。その後1年の保証期間をフル活用して、親指キーのガタ直しなどもしてもらい、なかなかのコンディションとなった。残念ながら、光が丘管弦楽団ではデビューし損なったが、ふじみ野のオペラ本番では活躍してくれたし、ピアノの友人との自主ジョイントコンサートも2回ほどこなして、まずまずの結果を出してくれている。
ただこのYFL-61という楽器、一つ大きな難点がある。それは、リングキーの穴がでかい事だ。自分で思うのはもちろんだが、オペラで一緒に吹いた人にも言われたし、楽器調整に持ち込んだミヤザワフルート アトリエ東京のリペアマンにも言われた。で、そのおかげと思うが、最低音域の右手3本指が開き切らず、塞ぎきれなくて音がカスる事象が頻発する。ここがなかなか克服できないが、それ以外はとても気に入っている。音色の美しさとそのコントロール性、キー操作のタッチの良さから、やはり、「総銀製」はいいんだな、と思わせる楽器だ。
だけど。2012年から使い続けているもう一つの楽器である YFL-584H(頭部管銀、インラインリング+H足部管=RH、Eメカなし)も別の良さがある。「総銀製についてうんぬんしていた記事」に書いているとおり、ポイントをしっかり当てないと鳴らないが、鳴ればしっかりとした音量で響かせることができる。すごく美しいという音はなかなか出せないが、安定した音色で音量のコントロールがしっかりできる。総銀のYFL-61が音色中心で音楽を構築していくタイプだとしたら、こちらのYFL-584Hは、ダイナミクスで音楽を構築していくタイプといえる。これは材質の問題よりも、H足部管であることと、白銅製の楽器が若干、管厚が厚いことも影響しているように思える。
ここで、やっと今日書きたかったテーマに辿り着く。
来年あたりに先述のピアノ友人コンサートで、シューベルトのアルペジョーネソナタをやろうという計画があり、最近さらい始めたわけだが、この2本の楽器、総銀ハンドメイドのYFL-61と頭部管銀セミハンドメイドのYFL-584Hとのどちらを用いるべきかというのが非常に悩ましい。最初のテーマのメロディーを吹くだけであれば、「圧倒的」に前者だ。音色で音楽を作っていきたいと思えばこれ一択だ。でも、このメロディーを含めて、シューベルトの音楽は本当にそれでいいんだろうか、という思いがある。美しい音楽は音楽それ自体が美しいのであり、音色の変化による過度な装飾は不要なのではないかと。それよりも、無垢な音色、安定した音色と音量を持つ後者の楽器のほうがふさわしいのではないか。そしてなにより、たった半音ではあるが、H足部管であればオクターブ上げずに済む箇所が数か所存在する。今のところ、後者を第一候補で考えている。
まず、YFL-61という楽器について。これは、購入した中古屋さん(イシバシ楽器)によると、1970年代にヤマハでは初めて作られたハンドメイドフルートとのこと。仕様は、総銀、インラインリングキーでC足部管(以下RC)、もちろんEメカなし。何でこれを買ったかというと、中古屋さんのページを見ていて、やっすい総銀製RC仕様のしかもOH済みの楽器があるなー、総銀製も試してみないと、「総銀製についてうんぬんしていた記事」の続きが書けないし、ということで店舗に足を運び、試奏したところ、一目ぼれしてしまったからである。頭部管に凹み修理跡があるのが気になる点ではあったが、そのキーの軽さと音色の美しさ、そして安さとRC仕様、二度と出会えないかもしれないと思い、買った。その後1年の保証期間をフル活用して、親指キーのガタ直しなどもしてもらい、なかなかのコンディションとなった。残念ながら、光が丘管弦楽団ではデビューし損なったが、ふじみ野のオペラ本番では活躍してくれたし、ピアノの友人との自主ジョイントコンサートも2回ほどこなして、まずまずの結果を出してくれている。
ただこのYFL-61という楽器、一つ大きな難点がある。それは、リングキーの穴がでかい事だ。自分で思うのはもちろんだが、オペラで一緒に吹いた人にも言われたし、楽器調整に持ち込んだミヤザワフルート アトリエ東京のリペアマンにも言われた。で、そのおかげと思うが、最低音域の右手3本指が開き切らず、塞ぎきれなくて音がカスる事象が頻発する。ここがなかなか克服できないが、それ以外はとても気に入っている。音色の美しさとそのコントロール性、キー操作のタッチの良さから、やはり、「総銀製」はいいんだな、と思わせる楽器だ。
だけど。2012年から使い続けているもう一つの楽器である YFL-584H(頭部管銀、インラインリング+H足部管=RH、Eメカなし)も別の良さがある。「総銀製についてうんぬんしていた記事」に書いているとおり、ポイントをしっかり当てないと鳴らないが、鳴ればしっかりとした音量で響かせることができる。すごく美しいという音はなかなか出せないが、安定した音色で音量のコントロールがしっかりできる。総銀のYFL-61が音色中心で音楽を構築していくタイプだとしたら、こちらのYFL-584Hは、ダイナミクスで音楽を構築していくタイプといえる。これは材質の問題よりも、H足部管であることと、白銅製の楽器が若干、管厚が厚いことも影響しているように思える。
ここで、やっと今日書きたかったテーマに辿り着く。
来年あたりに先述のピアノ友人コンサートで、シューベルトのアルペジョーネソナタをやろうという計画があり、最近さらい始めたわけだが、この2本の楽器、総銀ハンドメイドのYFL-61と頭部管銀セミハンドメイドのYFL-584Hとのどちらを用いるべきかというのが非常に悩ましい。最初のテーマのメロディーを吹くだけであれば、「圧倒的」に前者だ。音色で音楽を作っていきたいと思えばこれ一択だ。でも、このメロディーを含めて、シューベルトの音楽は本当にそれでいいんだろうか、という思いがある。美しい音楽は音楽それ自体が美しいのであり、音色の変化による過度な装飾は不要なのではないかと。それよりも、無垢な音色、安定した音色と音量を持つ後者の楽器のほうがふさわしいのではないか。そしてなにより、たった半音ではあるが、H足部管であればオクターブ上げずに済む箇所が数か所存在する。今のところ、後者を第一候補で考えている。
2019年8月18日日曜日
クロスバイクのVブレーキシュー交換
クロスバイクのVブレーキシューを交換した。MTBのほうで調子がよかったので、同じアリゲーターのやつ(VB-620)を使った。これは安くてよい。よくいろんなレビューで、シマノのは効き方がカッチリする感じだというが、このアリゲーターのは、たぶんその正反対。グニューっという感じで効く。でも良く効くし、コントロール性も悪くないと思う。何より安いのがいい。ところで、対象のバイクは、メリダの CROSSWAY 100-R なのだが、最初からついているブレーキシューというのがほんとに酷い。効きが悪いわけではないので安全性に問題はないが、とにかく音が酷い。ブレーキシューだけに?「シューー」って音が大きくて、リムを削り取っているのではないかというくらい。そして減りも早い。今回交換してだいぶ良くなった。
その後の再調整の話はこちら
交換後 |
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2019年8月17日土曜日
NewPC - E203MA-4000G 11.6型
久しぶりに新しいPCを買った。モバイルPC。用途は自宅のリビングで(今そうしているように)家族とテレビを見ながらだらだらとPCを使うとか(今そうしているように)ブログを書いたりとかするため。これまではスマホがその役回りだったのだが、老眼のためにネットを見るのは難しくなってきたし、ブログを書けるほどに入力も上手ではなかったので、PCが欲しくなった。
少し前に探した時にはどれもいまいちだったのだが、今回は割とすぐに良い機種が見つかった。もしかしたら無意識にハードルを下げていたのかもしれないが。
今回選んだPCを選択する際の条件
・ネットが見れればよい。
・個人ファイルはローカル保存しない。
・リビングで使うのでもACアダプタにはつなぎたくない。
・バッテリーは4時間くらいは連続使用に耐えてほしい。
・ファンレスがよい
・リビングダイニングのテーブルでも邪魔にならない大きさがよい
・キーボードはちゃんとしててほしい。
・実売3万円台前半まで。
レノボあたりが安い機種があったが、今時は風評かもしれないが中国企業を選ぶのは勇気が要る。
信頼できる国、メーカーでかつ安いとなると、台湾のASUSということになり(台湾びいきはメリダの自転車を使っているせいもあるかも)、楽天のポイント10倍というのもあって、以下の機種を選んだ。今日届いた。
E203MA-4000G 11.6型
感想
・画面の大きさは老眼でも大丈夫
・フットプリントが十分小さく、邪魔にならない(14型とかにしなくてよかった)
・キーボードが意外によい。キートップの質感とスプリングの重さがちょうどよい。
・バッテリーは液晶を明るくすると持たなそうだが暗いと老眼につらい。
・処理速度は今こうしてブログを書いている分にはまったく問題ない。
・キングソフトのWPSというオフィスソフトの製品版が付属しているのがよい。
良好良好
ちなみに、先に検討候補に挙がっていたのは
よかったよかった。
少し前に探した時にはどれもいまいちだったのだが、今回は割とすぐに良い機種が見つかった。もしかしたら無意識にハードルを下げていたのかもしれないが。
今回選んだPCを選択する際の条件
・ネットが見れればよい。
・個人ファイルはローカル保存しない。
・リビングで使うのでもACアダプタにはつなぎたくない。
・バッテリーは4時間くらいは連続使用に耐えてほしい。
・ファンレスがよい
・リビングダイニングのテーブルでも邪魔にならない大きさがよい
・キーボードはちゃんとしててほしい。
・実売3万円台前半まで。
レノボあたりが安い機種があったが、今時は風評かもしれないが中国企業を選ぶのは勇気が要る。
信頼できる国、メーカーでかつ安いとなると、台湾のASUSということになり(台湾びいきはメリダの自転車を使っているせいもあるかも)、楽天のポイント10倍というのもあって、以下の機種を選んだ。今日届いた。
E203MA-4000G 11.6型
感想
・画面の大きさは老眼でも大丈夫
・フットプリントが十分小さく、邪魔にならない(14型とかにしなくてよかった)
・キーボードが意外によい。キートップの質感とスプリングの重さがちょうどよい。
・バッテリーは液晶を明るくすると持たなそうだが暗いと老眼につらい。
・処理速度は今こうしてブログを書いている分にはまったく問題ない。
・キングソフトのWPSというオフィスソフトの製品版が付属しているのがよい。
良好良好
ちなみに、先に検討候補に挙がっていたのは
L406SA-S43060G 14.0型
という機種で、かなりよさげだったのだが、CPUが1世代前だったし、ASUSですでにディスコンだったし、何より買おうと思ってお気に入りにまで入れておいたビックカメラ.comがいざカートに入れようと思ったら品切れになってしまったというのがあって、急遽 E203MA-4000G 11.6型 をリサーチして2日くらい悩んでいたところ、先述の通り、折りしも楽天でJoshinでポイント10倍が始まってしまったので、通勤途中にスマホからポチってしまった。最後まで11.6型であること(老眼なので)を心配したのだが、杞憂だった。14.0型だったら邪魔だったろうし、CPUの世代って経験的に結構体感に効いて来ることがあるし。よかったよかった。
2019年8月2日金曜日
マチュー・デュフォー フルート・リサイタル
2019年8月1日、マチュー・デュフォー フルート・リサイタル をトッパンホールで聴いた。忘れないうちに感想を簡単にメモる。
最近、フルートの表現力なんて大したことなくて、もういいかな、って思っていたが、今日の演奏を聴いて、目が覚めた。フルートの、もっと言えば音楽が表現できることって、こんなにあるのに、狭い世界に生きてそのことに気づけていなかった自分が本当に不幸だ(だった)と思った。今日これを聴けたおかげで、不幸のどん底から這い上がった気分。
デュフォーの演奏は、(フルート関係者みんなが欲しい)テクニック的なことはできるのが当たり前で、そんなところにはほとんど頓着なく(いや、演奏開始前にかなり長くとっている精神統一タイムで頓着しつくして)、その上の「音楽としてどう表現するか」に全てのリソースを差し向けていた。端的に言えば、音色とダイナミックスの表現を、その曲のその部分で伴奏との絡みも含めていかに適切に使い分けるか、それがまさに職人芸的にほとんどパーフェクトにできていた。
表現技術の職人芸だけではない。その音楽解釈そのものも素晴らしい。前半「フランスもの」、後半「ドイツ・オーストリアもの」というプログラム構成、それに合わせたモードスイッチが素晴らしい。前半は、自身の得意技領域であり、特に最初のプーランクの見事さと言ったら・・・でも、第1楽章の特徴的な音階上昇の最初の音を大げさにテヌートするなど今までのデュフォーとは違った一面もあったが、私にはこれは「ありあり」。自分でも散々さらって本番もやった曲だが、「難所をさらりとこなしているのがすごい」というレベルではなくて、もっともっと上の次元での「すごい」で、感動以外の言葉がない。ミヨーもマルタンも文句がない。
そして後半の「しぼめる花」。チューニングが低いと思ったが、案の定、最初のhが低かった。が、それは瞬時に修正され、その前後でほかに1音たりとも音程で気になった個所はなかった。すごい。で、しぼめる花も文句の付け所がないばかりか、テーマの部分は、明らかに原曲を聴いて、歌詞の内容を理解している、そういう表現の演奏で、表面的に美しく吹こうとか、そういうものは一切感じられない、ただただ音楽のしもべになっている演奏だった。
次の「ウンディーネ」だが。これは、巷のyoutubeで流れているプロだかセミプロだかよくわからない人たちのほとんど雑音とも言える演奏たちを全て抹殺したくなる気持ちにさせる演奏だった。とにもかくにも美しいし、速いパッセージが「うるさく」ないし、ちゃんと水の精になっているし、ピアノの見せ所はちゃんと静かにしているし、ffになっても音色は美しいまま、音程も全くブレない、ロマンチックなメロディー、それがロマンチックな和声を感じながらダイナミクスと音色の変化で表現されていく。何もかもが別次元であり、フルートがこんなに表現できる楽器だったとは今まで知らなかった。この曲ではないが、今までライブで聴いた、ツェラー、シュルツ、パユ、アドリアン、工藤、どの人でも感じなかったことだ。
デュフォーは、ベルリンフィルに入る前にシカゴ響など輝かしいキャリアを持っていて、その経歴で職人芸が磨かれていることがよくわかった。オーケストラでの経験は、音楽の深い理解に寄与しているようで、ピアノが単なる伴奏ではなくて、二重奏として扱って演奏していることがよく伝わってきた。
そういえば、今回のピアニストだが、本当にうまかった。浦壁信二さん。私はピアノのことはよく知らないが、「しぼめる花」「ウンディーネ」のピアノは本当に上手だと思った。テクニック云々よりも、音楽的にデュフォーと対等だったと思う。各曲の演奏後にデュフォーが彼を讃えているようなジェスチャーを繰り返していた。
後半は大曲を2曲演奏し50分に迫るような長大なものだったのに、アンコールは3曲もやった。シューマンのロマンスイ長調、ベートーヴェンのロマンスヘ長調、そして無伴奏でヴィヴァルディ四季春1楽章のちょっと面白い編曲版と、これまた長大だったが、最後までバテていなかったのはすごい。シューマンは低音域だが全然「鳴り」は衰えず、ベートーヴェンも全音域使い、特に最後は最高音のCのピアニッシモまで完璧にこなし、ヴィヴァルディは、面白編曲ながらヴァイオリンソロの速い3連符の例の難しいやつは原曲通りの感じのアレンジだったが、これも完璧。これが日々ベルリンフィルで鍛えられているパワーなのだな、別次元だなと、そういう感想しか出なかった。
最近、フルートの表現力なんて大したことなくて、もういいかな、って思っていたが、今日の演奏を聴いて、目が覚めた。フルートの、もっと言えば音楽が表現できることって、こんなにあるのに、狭い世界に生きてそのことに気づけていなかった自分が本当に不幸だ(だった)と思った。今日これを聴けたおかげで、不幸のどん底から這い上がった気分。
デュフォーの演奏は、(フルート関係者みんなが欲しい)テクニック的なことはできるのが当たり前で、そんなところにはほとんど頓着なく(いや、演奏開始前にかなり長くとっている精神統一タイムで頓着しつくして)、その上の「音楽としてどう表現するか」に全てのリソースを差し向けていた。端的に言えば、音色とダイナミックスの表現を、その曲のその部分で伴奏との絡みも含めていかに適切に使い分けるか、それがまさに職人芸的にほとんどパーフェクトにできていた。
表現技術の職人芸だけではない。その音楽解釈そのものも素晴らしい。前半「フランスもの」、後半「ドイツ・オーストリアもの」というプログラム構成、それに合わせたモードスイッチが素晴らしい。前半は、自身の得意技領域であり、特に最初のプーランクの見事さと言ったら・・・でも、第1楽章の特徴的な音階上昇の最初の音を大げさにテヌートするなど今までのデュフォーとは違った一面もあったが、私にはこれは「ありあり」。自分でも散々さらって本番もやった曲だが、「難所をさらりとこなしているのがすごい」というレベルではなくて、もっともっと上の次元での「すごい」で、感動以外の言葉がない。ミヨーもマルタンも文句がない。
そして後半の「しぼめる花」。チューニングが低いと思ったが、案の定、最初のhが低かった。が、それは瞬時に修正され、その前後でほかに1音たりとも音程で気になった個所はなかった。すごい。で、しぼめる花も文句の付け所がないばかりか、テーマの部分は、明らかに原曲を聴いて、歌詞の内容を理解している、そういう表現の演奏で、表面的に美しく吹こうとか、そういうものは一切感じられない、ただただ音楽のしもべになっている演奏だった。
次の「ウンディーネ」だが。これは、巷のyoutubeで流れているプロだかセミプロだかよくわからない人たちのほとんど雑音とも言える演奏たちを全て抹殺したくなる気持ちにさせる演奏だった。とにもかくにも美しいし、速いパッセージが「うるさく」ないし、ちゃんと水の精になっているし、ピアノの見せ所はちゃんと静かにしているし、ffになっても音色は美しいまま、音程も全くブレない、ロマンチックなメロディー、それがロマンチックな和声を感じながらダイナミクスと音色の変化で表現されていく。何もかもが別次元であり、フルートがこんなに表現できる楽器だったとは今まで知らなかった。この曲ではないが、今までライブで聴いた、ツェラー、シュルツ、パユ、アドリアン、工藤、どの人でも感じなかったことだ。
デュフォーは、ベルリンフィルに入る前にシカゴ響など輝かしいキャリアを持っていて、その経歴で職人芸が磨かれていることがよくわかった。オーケストラでの経験は、音楽の深い理解に寄与しているようで、ピアノが単なる伴奏ではなくて、二重奏として扱って演奏していることがよく伝わってきた。
そういえば、今回のピアニストだが、本当にうまかった。浦壁信二さん。私はピアノのことはよく知らないが、「しぼめる花」「ウンディーネ」のピアノは本当に上手だと思った。テクニック云々よりも、音楽的にデュフォーと対等だったと思う。各曲の演奏後にデュフォーが彼を讃えているようなジェスチャーを繰り返していた。
後半は大曲を2曲演奏し50分に迫るような長大なものだったのに、アンコールは3曲もやった。シューマンのロマンスイ長調、ベートーヴェンのロマンスヘ長調、そして無伴奏でヴィヴァルディ四季春1楽章のちょっと面白い編曲版と、これまた長大だったが、最後までバテていなかったのはすごい。シューマンは低音域だが全然「鳴り」は衰えず、ベートーヴェンも全音域使い、特に最後は最高音のCのピアニッシモまで完璧にこなし、ヴィヴァルディは、面白編曲ながらヴァイオリンソロの速い3連符の例の難しいやつは原曲通りの感じのアレンジだったが、これも完璧。これが日々ベルリンフィルで鍛えられているパワーなのだな、別次元だなと、そういう感想しか出なかった。
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